本当は、綺麗な銀色のスプーンを作りたいんだけど、注文が来るのは大量の木の割り箸。
毎日言われるように割り箸をつくる。
木の割り箸を何千本も何万本、何億本。
時には使えない箸だから作り直せと言われたり、太さが違うから揃えろと言われたり、そんな興味もない事で消耗する日々。
この先も、銀のスプーンは作れないだろう。
同業者は、仕事だから当たり前だというように、割り箸を作ることと、割り箸作りを頼んでくる人との仲を気にすることに夢中のようだ。
自分だけが、そこにはない銀色の物体のことばかり考えている、異常者・はみ出し者なのだ。
あれ、何が作りたかったんだっけ。
銀のスプーン?
木の割り箸?
本当は銀のスプーンなんてなくて、そんなの作る人なんてどこにもいなかっただけじゃないっけ。
もう全部どうでもよくなってきて、何も作る気もなくなってきた。